M&Aされるとどうなる?企業の存続と従業員の処遇を解説

  • 2023年1月23日
  • 2023年2月1日
  • M&A

M&Aによって会社を買収される側にとって気になるのは、その後の会社の存続や従業員の処遇といった点だと思います。M&Aの状況によって、売り手企業の待遇は大きく変わってきます。

本記事では、M&Aされた会社がどうなるのかについて詳しく解説していきます。

M&Aされたら会社はどうなる?廃業の危険性はある?

M&Aが行われると、買収された売り手側企業の経営者や役員、従業員の待遇は大きく変化するのが一般的です。
とはいえ、

買収によって会社がなくなってしまうケースは少なく、ほとんどの企業はM&Aのあとにも存続しています。

M&Aの手法には事業譲渡や株式譲渡といった種類があります。

株式譲渡とは、売り手側のオーナーが自社株式の過半数または100%を第三者に売却する方法で行われます。

事業譲渡とは、売り手側のオーナー企業が特定事業を第三者に売却する手法です。契約を引き継ぐか引き継がないかを個別に確認し、引き継ぐときには新たに雇用契約をし直すことになります。

中小企業のM&Aのほとんどは株式譲渡の形で行われます。株式譲渡が実施されたあとでも、会社に在籍している従業員は引き続き働けることがほとんどです。

よって、M&Aが行われたとしても、廃業になるケースはほとんどありません。

会社が買収されても企業は存続する事が多い

M&Aが行われたあとでも、企業は存続する場合が多いということがわかりました。

M&Aでは、売り手側のオーナーが条件を十分に確認し、内容に納得したうえで契約を行います。もしも待遇が悪い状態でM&Aを行えば、大切な従業員を退職などで失ってしまうリスクが高まります。また、働き続ける従業員のモチベーションが大きく下がってしまう懸念もあります。
そのため、

従業員が著しく不利になる条件でM&Aを行うことを了承する売り手オーナーはほとんどいません。

M&Aを実施するときには、今後会社を存続できるのか、従業員の待遇を維持してもらえるのかを確認しておくことが大切です。交渉段階で契約条件を仔細に定めるなどの方法で、会社や従業員を守りましょう。

以下の記事にて、会社を閉めたいときにすべきことを詳しく解説しています。

M&Aを実施したあとに企業が存続する状況の例

M&Aの目的をはっきりさせたうえで双方が十分にすり合わせを行えば、M&A後にも会社を存続させていくことは十分可能です。

M&Aが成功し、企業が存続する状況には以下のようなものがあります。

利害が一致していればM&Aは成功しやすい

買い手企業と売り手企業の双方にメリットがもたらされるような状況であれば、M&Aは成功しやすくなります。

例えば、買い手企業が新事業に着手したいと考えてM&Aが行われる例は多いものです。このとき、想定している新事業の内容に合致する売り手企業を見つけ、スムーズにM&Aを軌道に乗せることが肝心です。

売り手企業がこれまで積み上げた実績やノウハウを活かせるようにすれば、M&Aのあとにも安定して事業を継続することが可能となります。

シェア拡大を目指すM&Aも有効

M&Aがシェア拡大の足がかりになるケースでも、その後の経営は安定しやすい傾向になります。

大手企業がもつブランド力や販売網と、中小企業がもつノウハウとを共有することが、M&Aのシナジー効果獲得につながります。販路が拡大すれば仕入れコストを抑えたり、生産ラインの稼働率を上げたりといった対処ができることもあります。

地理的な条件などを考えながら販路を拡大していくことが、M&A後に会社を存続させるためのポイントです。

異業種のM&Aが成功するケースもある

異なる業種のM&Aは失敗することがあるといわれますが、適切な企業を選び事前のリサーチや準備を怠らずにM&Aを進めていけば、成功の可能性は十分あります。

例えば一般企業がメディア企業への転換を目指すために、ウェブ制作や動画制作に特化した企業とのM&Aを行った場合で考えます。このM&Aには、業種の垣根を超えて需要の高いコンテンツを制作できるという魅力があります。次代のニーズを見越してM&Aを行えば、事業拡大も達成しやすくなります。

M&A後に会社が存続する場合の従業員の処遇

多くの会社はM&Aのあとにも変わらず存続することができます。以前より従業員の待遇がよくなるケースも少なくありません。ここでは、M&Aをきっかけに存続していく会社の状況と従業員の処遇について考えていきましょう。

従業員の待遇が悪くなるケースは少ない

M&Aでは、規模の小さな売手企業を規模の大きな企業が買い取ることになります。

規模の大きい会社に吸収されるような形でM&Aが行われたあとには、従業員の給与形態は買い手企業の方針に合わせて決定されます。

結果として、従業員の給与はM&Aの前に比べてアップするケースが多いのです。

M&Aをきっかけに給与を下げるような対応をすると、モチベーションが大きく低下し生産性も下がってしまいます。さらに、退職リスクも増加することになり、結果としてM&Aが失敗するおそれがあります。こういった問題を避けるため、M&Aの際には従業員に対して十分な配慮を行うことがほとんどです。

キャリアの幅が拡大しやすくなる

M&Aをきっかけに、従業員のキャリアの幅が広がるケースもあります。

譲渡企業が同様の業種を扱う規模の大きい会社という場合であれば、従業員はより大きな会社に在籍し、これまでのノウハウを活かして働くことができます。異なる業種を扱う企業とのM&Aでは、新たな仕事に取り組める可能性もあります。

大企業とのM&Aが成立すれば、従業員は名の知れた企業の傘下で働くことができます。従業員にとって、M&Aはキャリア形成のきっかけになるかもしれません。また、これまでとは異なる人との関わりでネットワークが拡大しやすくなるのもM&Aのメリットです。

退職金を受け取ることも可能

株式譲渡という形でM&Aが行われたときには、株式が移動するのみで従業員の雇用関係に変化はありません。そのため、退職金も以前のまま引き継がれることになります。

事業譲渡の形でM&Aをしたときには、M&A直後に個別に雇用契約を結び直します。このとき、退職金の条件が以前と変更になる可能性もあります。とはいえ、ほとんどのM&Aでは退職金がマイナスにならないよう配慮されるため、それほど心配はいりません。

事業状況や経営判断によってはM&A後に閉業することもある

M&Aがうまくいけば、従業員は好環境で働き続けることが可能となります。一方で、M&Aの判断を誤ったり事業の状況が悪化したりしたことが原因で、のちに廃業に追い込まれるケースも残念ながらあるものです。

存続しない状況の例

ここからは、M&Aを行ったにもかかわらず存続しなかった状況の例を紹介します。

M&Aの最中や直後に業績悪化に陥る

M&Aを進めている最中やM&Aを行ったあとに業績が大きく悪化し、廃業に追い込まれる例もあるものです。M&Aにばかり集中してしまい、本業である経営がおろそかになると、いつの間にか企業の収益が下がっているということもあります。

M&Aの際には専門家のサポートを受けるなど工夫し、本業がおろそかにならないよう工夫しましょう。

M&Aのあとに大きな問題が発覚する

M&Aの際には買い手企業が売り手企業を調査するデューデリジェンスが行われるのが一般的です。デューデリジェンスが不十分なままM&Aを進めてしまうと、後から思わぬ問題が発覚し、窮地に陥る可能性も考えられます。

デューデリジェンスについては下記の記事にて詳しく解説しています。

特に、M&Aのあとに債務が明らかになった場合には、M&Aの効果が大きく下がってしまいます。自社の債務を把握しないままM&Aに踏み切った結果、経営が立ち行かなくなり廃業に追い込まれるケースもあるのです。債務の情報を伝えないままM&Aを行うことは会社の信用問題に関わるため、十分な注意が必要です。

専門分野とは異なるM&Aで失敗する

買い手企業と売り手企業の事業内容や専門分野が異なるM&Aが行われるケースもあります。しかし、ノウハウがない状況でM&Aを行うことはとても難しく、失敗に終わることも少なくありません。

M&Aでは買い手と売り手の方向性を十分に検討し、シナジー効果を高めていく必要があります。別分野のM&Aを行うときには、主力事業に影響が及ばないよう十分に検討することが大切です。

M&Aをきっかけに廃業する場合の従業員の処遇は?

会社を買収されたのち、なんらかの事情で企業が存続できないというケースでは、従業員にもさまざまな待遇が待ち受けています。

ここからは、M&Aが失敗し廃業に追い込まれたときの従業員の扱いについて考えていきます。

職務の重複で従業員の流出が起きることがある

M&Aの失敗をきっかけに、従業員が退職することになる例は少なくありません。M&Aの内容に納得できなかったり、条件面が悪かったりといった理由で従業員が退職を考えるケースもあります。

M&Aのあとに部門や営業所が重複した場合は、リストラを視野に入れる必要もあります。こういった事情によって優秀な従業員が流出してしまうのは、会社にとって大きな損失となります。

勤務地変更で従業員に負担がかかることがある

M&Aに失敗したあとには、在籍する従業員が勤務地変更を言い渡される例もあります。転勤に伴う引越しを行う従業員のほか、単身赴任や長時間の通勤といった形で対応するケースもあります。

勤務地変更によって、家族と離れることになる単身赴任や、数時間かかる通勤などが必要となった場合、従業員は大きな負担を抱えることになります。従業員が以前と同じような生活を送れなくなるリスクが生じるのが、M&A失敗におけるデメリットです。

企業の存続を念頭にM&A後の展開を十分考慮しよう

M&Aの際に条件を十分にすり合わせておけば、その後会社が存続できなくなるリスクを回避できます。従業員の処遇についてもある程度配慮されるのが一般的です。

ただし、M&Aがうまくいかなかったことがきっかけで会社が廃業に追い込まれたり、従業員が不当な扱いを受けたりする可能性がないわけではありません。

買収後に従業員の処遇がどうなるのか、会社は存続できるのかといった点は、事前に交渉し明文化しておきましょう。両者が納得したうえでM&Aに踏み切ることが、その後の事業を軌道に乗せることにつながります。もちろん、会社や従業員を大切にしてくれる会社を選んでM&Aを行うことも重要なポイントです。

>全国M&A支援協会

全国M&A支援協会

全国M&A支援協会は、士業に特化したM&Aで30年以上の実績。士業事務所に特化したWebマーケティングサービスを展開し、事務所経営を成功に導くためのセミナーも随時開催しています。
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