会社を閉めたい時にすべきこと

会社を閉めることを検討している方のために、会社を閉めたいと思うタイミングや、会社を閉める際の流れ、損せずに会社を閉める方法などを紹介します。会社を閉めずに事業を継続する方法についても解説しますので、会社の廃業や解散を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

会社を閉めるということは苦渋の決断のはずです。

ただ、決断したのであれば、できるだけ早く必要な手続きを行い、スムーズに廃業に進めなければなりません。

では、会社を閉めたい時、どのようなことをすればいいのでしょうか。

今回は会社を閉めたいと思ったときに必要な廃業の準備や通常清算の流れ、廃業しない選択肢について解説します。

会社を閉めようか悩んでいる方は、お役立てください。

会社を閉めたいと思うのはどんな時?

「まだ立て直せるかもしれない」「なんとかして続ける方法を見つけたい」と思い、会社を閉めるかどうかをなかなか決断できない方も多いのではないでしょうか。

会社を経営している人が会社を閉めたいと思うようになるタイミングについて紹介します。

1. 経営者の健康上の理由

高齢化社会が進み、会社の経営者も高齢化しています。

年齢を重ねるにつれてさまざまな健康上の問題が起きてしまい、その結果「会社を閉めたい」と思う方も多いようです。

大きな病気をしたことをきっかけに、この先の生き方を見直す方もいます。

経営者の健康上の理由であれば、会社を閉めずに後継者に譲ることもできますが、どちらにしても早めに判断しておく必要があるでしょう。

2. 後継者がいない

会社を誰かに引き継いでほしいと思っているものの、後継者が見つからず会社を閉める決断をする方も少なくありません。

大切に守ってきた会社を引き継いでもらうわけですから、信頼できる人材を見つける必要があります。

安心して任せられる人材がいない場合は、会社を閉める決断をする経営者も少なくありません。

3. 人材不足

高齢化社会で労働人口が減少の一途を辿っている今、人材不足が原因で会社を閉めようと考える経営者も多いです。

特定のスキルや能力が必要な事業を展開している場合、そのスキルや能力を持った人材が確保できないことには、事業を続けていくことはできません。

優秀な人材はどの企業も喉から手が出るほど欲しいため、人材を確保しようとしても、求める人材を雇用できない可能性もあります。

4. 債務超過による経営の悪化

債務超過が積み重なり、経営が悪化したことで会社を閉める決意をする経営者は多いです。

どうにか好転させようと頑張ってみるものの、債務超過が積み重なって赤字が続けば、どんどん負債が膨らんでしまいます。

会社を清算して債権の弁済に当てようとしても、負債が多すぎると弁済できなくなるケースも少なくありません。

今後経営状況が好転する見通しが立たないのであれば、早めに会社を閉めた方がいいでしょう。

また、債務超過には至っていないとしても、自転車操業だったり、融資を断られたりした場合も、会社を閉めたいと思う経営者が多いタイミングです。

会社を閉めたいと思ったら会社廃業の準備をしよう

会社を閉めるとき、廃業・倒産・解散の3つの方法があります。

廃業とは、経営者が自主的に会社の事業を終了させることです。

似たような言葉に倒産や清算などがありますが、経営者が「会社を閉めたい」と思ったり、考えたりしている段階での選択肢は「廃業」になるでしょう。それぞれの言葉の意味と使い方については下記にて解説しています。

廃業する場合は、債務超過になっていないケースが多く、負債があったとしても返済できるレベルであることが多いでしょう。

廃業を選択するケースでは、経営者の健康問題・後継者問題・人材不足などが多いです。

倒産は、会社を消滅させるために行う破産と、会社を存続させるために行う民事再生の二つがあります。

債務超過により経営が悪化し、債権者への弁済ができない場合は、破産するのが一般的です。

解散は、会社が行っている事業を全て止めて、会社自体を消滅させることをいいます。

会社を解散させると資産や負債が残りますので、資産の売却・債権の回収を行い、負債を弁済して会社を生産します。

廃業
廃業とは経営者が会社の経営を辞退する事です。資金繰りに困っていない状態で、経営者の判断によって廃業を選択することになります。

倒産
倒産とは資金繰りの問題で会社が経営できなくなることです。

解散
解散とは株主総会の決定によって会社を消滅させる前段階です。事項の清算を行うことで会社が消滅します。

清算
資産や負債を整理して会社を消滅させることです。
更に、通常清算と特別清算に分けられます。

会社を閉めるときの状況によって、最適な方法を選ぶようにしましょう。

会社の通常清算の流れ

会社を閉める際の状況で、どのように会社を閉めるか決めなくてはなりませんが、ここでは会社の通常清算の流れについて解説します。

スムーズな清算ができるよう流れを把握しておきましょう。

会社を清算するための準備

会社を解散して清算することを決めたら、まずは事業を終了させるための準備を行なっていきましょう。

基本的には以下のような準備が必要です。

  • 従業員や取引先に会社を清算することを説明する
  • 会社が加入している損害保険や生命保険を解約する
  • 売掛金・未収金・貸付金などを回収する
  • 買掛金・借入金・未払金を支払う
  • 従業員への給料を支払う
  • 会社が行なっている各種契約を解約する

これらの準備は、解散後の清算時に行うケースもあり、必ずしも解散前に行わなければならないわけではありません。

ただし、円滑に全ての手続きが進められるよう、解散前に行わなくてはならないことを整理しておくのがおすすめです。

①株主総会の特別決議を成立させる

会社を解散させるというのは、重大な決断です。

そのため、株主総会の特別決議を行い、会社の解散を決議しなくてはなりません。

株主の過半数が出席し、そのうち2/3以上が賛成することで決議したとみなされます。

1/3以上の株主が解散に反対した場合は、特別決議は不成立で、解散することができません。

また、この際に清算人の選任決議も同時に行う必要があります。

ほとんどのケースでは、会社の取締役が清算人を行いますが、定款によっては顧問弁護士が清算人になるケースもあります。

②会社の解散・清算人の選任登記

株主総会で解散が決議されたら、2週間以内に会社を解散させます。

管轄の法務局で、解散登記を行いましょう。

また、この際に清算人の登記を行う必要があります。

一般的には「解散及び清算人選任登記」で、登記申請が行われます。

③会社解散の届出

解散登記申請を行なったら、自治体や管轄の税務署に解散の届出を行わなければなりません。

届出の期限はありませんが、登記後できるだけ早く済ませておきましょう。

また、解散登記から5日以内に管轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出します。

従業員を雇っている場合は、「保保険者資格喪失届」の提出も必須です。

加えて、登記後10日以内に管轄の職業安定所に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出してください。

全従業員の退職手続きが終わったタイミングで「雇用保険適用事業所廃止届」を提出する必要があります。

さらに、事業を廃止して50日以内に管轄の労働基準監督署に「確定保険料申告書」「労働保険料還付請求書」を提出することも義務付けられています。

期限があるものがほとんどですから、期日までに提出できるよう準備しておきましょう。

④官報で公告する

会社を解散する際は、官報でその旨を公告しなければなりません。

何もしないでいると、債権者が会社が解散に気付かず、債権の取り立てができなくなる可能性があります。

そのため、広く解散の事実を伝える目的で公告を行う必要があるのです。

これ以降のプロセスは、公告から2ヶ月以上経ってはじめて進むことができます。

⑤解散時の決算報告書の作成及び確定申告

解散時の貸借対照表と財産目録、事業年度開始から解散時までの損益決算書の作成を行います。

これらの決算報告書の内容を元にして、法人税申告書を作成し、正しい税額を計算しなければなりません。

基本的には解散日から2ヶ月以内の確定申告を行い、納税を行う必要があります。

ただし、特例として確定申告の提出を延長することも可能です。

財産目録は株主総会で承認を得るために作成します。

⑥債権者への弁済と株主への分配

不動産や有価証券など、会社が保有していた資産を売却し、債権の回収を行います。これが清算です。

売却益・回収した債権・残っている預貯金で、債権者への弁済を行いましょう。

また、弁済が完了したあとに残った財産は株主に分配します。

⑦清算結了時の決算報告書を作成

財産の分配まで完了したら、清算人によって結了時の決算報告書を作成します。

作成した決算報告書は株主総会で承認を得る必要があり、承認を持って法人格の消滅となります。

⑧清算結了登記

株主総会で清算結了時の決算報告書が承認されたら、その日から2週間以内に管轄の法務局で決算結了登記の手続きを行いましょう。

この登記が受領されると、登記簿が閉鎖されます。

⑨清算結了時の確定申告

清算結了登記が完了してから1ヶ月以内に清算結了時の確定申告を行わなければなりません。

必要があれば、すみやかに納税も行います。

⑩清算結了届の提出

清算結了登記が完了したら、清算結了登記後の謄本とともに清算結了届を管轄の税務署に提出する必要があります。

この清算結了届の受領をもって、法的に会社を閉めたことになります。

会社を通常清算する際に必要な書類

会社を解散して清算する場合には、さまざまな書類が必要になってきます。

どのような書類が必要なのか把握し、漏れがないようにしておきましょう。

解散・清算人登記に必要な書類

まずは解散・清算人登記を行う際に必要な書類です。

株主総会で解散が決議された日から2週間以内に提出が必要となります。

株主総会議事録

株主総会の特別決議で、解散の決議が成立した旨が記載されている議事録が必要です。

定款

定款に清算人の設置について規定がないかどうかを確認するために添付しなければなりません。

定款が手元にない場合は、公証役場で保管された原始定款の謄本を発行してもらいます。

清算人の就任承諾書

株主総会で選任された清算人に、清算人として就任する意思があることを示す書類です。

清算人が株主総会に出席した場合は、その旨が議事録に記載されているため、就任承諾書を作成する必要はありません。

清算人の印鑑届出書

申請日から起算して3ヶ月以内に発行された清算人の印鑑届出書が必要です。

株主名簿

議決権上位10名の株主もしくは、議決権割合が2/3に達するまでの株主の少ない方の株主名簿が必要です。

株主名簿には株主の名前(名称)、住所、議決権数、議決権数割合を記載する必要があります。

清算結了登記に必要な書類

清算結了時の決算報告書が株主総会で承認されたら、2週間以内に清算結了登記を行う必要があります。

その際に必要なのは以下の書類です。

株主総会議事録

株主総会で清算結了時の決算報告書が承認されたことを証明するために、株主総会議事録が必要となります。

決算報告書

株主総会で承認された清算結了時の決算報告書を添付します。

株主名簿

解散・清算人登記の手続きをする際に提出した株主名簿と同じ規定の株主名簿を提出します。

損せずに会社を閉めるには?

損せずに会社を閉めるためには、経営状況が最悪の事態に陥る前に事業を終了させ、解散して会社を清算する必要があります。

大切に守ってきた会社を閉めるという決断は簡単にできないものですが、ずるずると引き伸ばすと、債務超過がどんどん増え、最悪の場合は倒産させなければならなくなってしまいます。

倒産は取引先にも大きな影響が出てしまいますから、経営状況が悪化し、好転する見通しが立たないのであれば、できるだけ早く会社を閉める決断をしましょう。

また、会社を閉めるのではなく、休眠会社にするという方法もあります。

事故や病気などで一時的に事業の継続が難しくなった場合や、少し経てば資金繰りがうまくいく見込みがある場合、休眠会社なら手続き比較的簡単に済みます。

見通しが経てばいつでも事業活動を再開することが可能です。

また、事業を行わないため、休眠させている間の法人税や法人事業税、消費税などは発生しません。

会社自体は維持しているため根本的な解決にはなりませんが、まだ一つの方法として把握しておきましょう。

休眠会社にする場合は、以下の書類が必要になります。

  • 異動届出書
  • 給与支払事務所等の廃止届出書
  • 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届
  • 労働保険確定保険料申告書
  • 雇用保険適用事業所廃止届

会社を閉めたいときには、M&Aという選択肢もある

会社を閉めたいと考えている場合は、M&Aという選択肢を検討してみるのも一つの方法です。

M&Aなら譲渡や合併によって、事業を継続できます。

自社で後継者を見つけられない場合も、M&Aなら最適な後継者が見つけられるかもしれません。

従業員も職を失わず、取引先に大きな影響が出るのを避けられます。

M&Aは債務超過がある企業でも、可能なケースもあります。

「もう閉めるしかない」と諦めた会社でも、その会社が持つ強みを求めている会社があれば、高値で売却できるかもしれません。

会社を閉めるという結論を出す前に、M&Aも検討してみてはいかがでしょうか。

状況に合わせて適切な方法で会社を閉めよう

一口に会社を閉めるといっても、会社の置かれている状況によって方法が変わってきます。

まずは今どのような問題で会社を閉めたいと思っているのかを明確にし、最適な方法を見つけましょう。

経営が好転する見通しが立たないのであれば、早めに判断するのが賢明です。ただ、事業の継続を諦めている場合でも、M&Aなら事業を続けるチャンスはあります。

まずは専門家に相談するなどして、自社のM&Aの可能性を探ってみましょう。

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