デューデリジェンスとはM&Aにおける企業調査の手続きのことをいいます。
M&Aの際に想定されるさまざまなリスクを避けるためにも、事前に仔細な調査を行うことが重要です。デューデリジェンスには多くの種類があるので、状況に応じて調査する項目を見極めましょう。
デューデリジェンス(Due Diligence)は、M&Aの成功を左右する大切なプロセスの1つです。デューデリジェンスでは、買い手企業が対象企業の経営状態や抱えるリスクを詳しく調査していきます。
本記事ではデューデリジェンスの種類や進め方、費用相場について詳しく解説していきます。
デューデリジェンスとはM&Aの際に行われる調査のこと

デューデリジェンス(Due Diligence)=当然実施するべき義務や努力という意味。企業のM&Aにおいては、意思決定の際に実施される調査する手続きのことです。
M&Aでは、買い手側の譲り受け企業が、譲渡対象の売り手企業を詳しく調査する必要性が生じます。売り手企業の財務状況や事業内容などを詳しく確かめなければ、買収にふさわしい企業か否かを判断することはできません。
デューデリジェンスには、正確に企業価値評価を行いM&Aの準備に役立てるという大きな目的があります。
デューデリジェンスの具体的な進め方
デューデリジェンスの進め方は以下の通りです。
①調査時間とコストの見積もり
②実施方針の決定
③売り手側への資料開示請求
④ヒアリング
⑤資料分析
⑥M&Aの意思決定
デューデリジェンスはまず、調査にかかる時間やコストの見積もりを行い、実施方針を決定することから始まります。デューデリジェンスの種類によっては専門家に外部委託する必要性も生じます。
続いて、対象となる企業と秘密保持契約を結び、必要な情報を提供してもらいます。会社概要や株主名簿、財務諸表、人事や労務関係の資料、契約関係の書類など、さまざまな資料を取得し内容をチェックしましょう。資料だけでは得られない情報も多いため、経営陣に聞き取りをするなどの調査が必要となることもあります。
調査後にはレポートなどをまとめ、内容の精査をします。調査内容を踏まえて、M&Aが可能か、それとも中止すべきかといった意思決定を行いましょう。
M&Aの際に行われるデューデリジェンスの種類とは

デューデリジェンスには企業の事業内容や経営状態を調べる事業デューデリジェンスをはじめ、いくつもの種類があります。ここからは、デューデリジェンスの種類を具体的に見ていきましょう。
事業デューデリジェンス
事業デューデリジェンスは売り手企業の経営状態や事業内容を調査するデューデリジェンスです。ビジネスデューデリジェンスとも呼ばれます。
事業デューデリジェンスの費用相場は50万円~100万円程度です。
どのような製品、サービスを扱っているのかといった状況のほか、仕入先や顧客、市場、保有する技術、競合などを総合的にチェックします。売り手企業がその分野でどんな立ち位置にいるのか、将来性はあるのかといった点を調査し、M&A後のシナジーやリスクを把握することが大切です。
事業デューデリジェンスは経営統合にあたって重要となるデューデリジェンスです。正確な調査を行うため、経営コンサルタントなどの手を借りる企業も少なくありません。
財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスは売り手企業の財務状況を調査することです。ファイナンシャルデューデリジェンスとも呼ばれます。
財務デューデリジェンスの費用相場は100万円~です。
財務デューデリジェンスでは売り手企業の実態純資産や正常収益力、キャッシュフロー債務の有無など、財務状況を確認します。企業の財務状況は決算書の内容とかけ離れていることもあるため、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの情報を比較し、予測を立てることが大切です。
法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスはM&Aの前後に法律上の問題が起きないかを確認することです。リーガルデューデリジェンスとも呼ばれます。
法務デューデリジェンスの費用相場は100万円程度です。
売り手企業の商業登記や株式の状況、許認可といった項目のほか、契約の内容、資産の状況、債務や訴訟の有無について調べていきます。M&Aでは許認可を引き継がなければ事業の継続ができないため、この点は特に注意深くチェックされます。
また、売り手企業が訴訟を抱えているときには、どの程度のリスクがあるのかを検討する必要があります。訴訟には莫大な時間やコストがかかる上に企業の評判を左右することもあるので、適切な判断が求められます。
税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスは売り手企業の過去の税務申告内容や納税の状況を調べることです。
税務デューデリジェンスの費用相場は200万円~です。
売り手企業の税務に関する資料を調査しておくことも重要です。税務リスクの有無を把握することが可能となります。
税務リスクがあるときには、その内容や程度を詳しく調べ、買収にふさわしいどうかを考える必要があります。特に、M&Aで株式譲渡を行う際には税務リスクがすべて引き継がれるため、冷静な判断が求められます。
M&Aをしたあとに過去の税務申告漏れや納税のミスが発覚したときには、買い手企業にペナルティが課せられることになります。税務デューデリジェンスを細かく実施することで、大きな損失を未然に防ぐことができます。
その他のデューデリジェンス
代表的なデューデリジェンスのほか、情報システムに関する調査を行う、ITデューデリジェンス、人事制度や労使関係のチェックを行う人事デューデリジェンスなどの調査もあります。
また、大きなM&Aでは、環境デューデリジェンスや顧客デューデリジェンスといった調査を導入するケースもあります。M&Aの状況に応じて、調査項目を決めていくことが重要です。
M&Aにあたって行われるデューデリジェンスの費用相場

M&A前のデューデリジェンスにはまとまった費用がかかり、総額では300万円ほどになることが多いです。
デューデリジェンスを社内の人員のみで行えば、ある程度費用を抑えることができます。しかし、デューデリジェンスには専門的な知識が必須となるため、多くの企業では財務や法務、税務のデューデリジェンスを外注しています。
弁護士や公認会計士、税理士などの専門家に依頼するときには、費用がかなり高額になることもあるので注意が必要です。
例えば事業デューデリジェンスでは1時間あたり2万~10万円ほど、総額で30万~300万円ほどの費用がかかります。
財務デューデリジェンスでは総額で100万~500万円といった費用がかかることもあります。
規模の大きなM&Aが行われる場合には、デューデリジェンスの総額が数千万円規模になることも少なくないのです。M&Aの前後にはデューデリジェンス以外にも多くの出費が見込まれます。
手数料 | 内容 | 費用 |
---|---|---|
相談料 | 相談するための費用 | 0円~10万円 |
初期費用 | 作業開始 | 0万円~200万円 |
成果報酬(経過) | 中間報告時の達成費用 | 0円~200万円 成功報酬の10%~20% |
定額顧問料 | 毎月の定額費用 | 月間30万円~100万円 |
デューデリジェンス費用 | 調査以来の費用 | 100万円~500万円 |
成果報酬 | 完了報告時の達成報酬 | 取引金額の1%~5% |
しかし、デューデリジェンスを十分に行わないままM&Aに踏み切ると、あとになって思わぬ問題が発覚することがあるかもしれません。M&Aにあたってのリスクを下げるためにも、十分な費用をかけて適切に調査することが肝心です。
デューデリジェンスを行う際のチェックポイントや注意点

デューデリジェンスの実施方法や調査内容、依頼先などは、M&Aの規模に応じて決めていく必要があります。ここからは、デューデリジェンスを行う際に気をつけておきたいポイントを説明します。
デューデリジェンスの規模を見極める
デューデリジェンスを行う際にはM&Aの規模を考慮することが大切です。大きなM&Aの際にデューデリジェンスの費用を下げてしまうと、十分な調査ができずリスクが高まってしまうことになります。
しかし、高額なデューデリジェンス費用を計上すると、M&Aの際に資金不足に悩まされることになるかもしれません。リスクを避け、効率の良いM&Aを行うためにも、規模に応じた調査費用を設定しましょう。
デューデリジェンスの情報管理を徹底する
デューデリジェンスの際には、売り手企業と秘密保持契約を結んだ上で必要な情報を開示してもらうことになります。
このとき、開示された情報が第三者に漏れてしまうと、秘密保持契約に違反したことになり、損害賠償を請求されるリスクがあります。情報の扱いに十分注意しながらデューデリジェンスを行うことが大切です。
調査期間を短期集中
適切なデューデリジェンスでリスクを回避しよう
デューデリジェンスとは、M&Aにあたって対象企業の経営状態やリスクを把握するための調査です。事業内容のほか、財務や税務、法務などさまざまな観点から調査を行います。
デューデリジェンスには時間や費用がある程度かかります。専門家に相談するなど念入りな準備を行い、スケジュールを立てて適切に調査を進めていくことが大切です。