会社の債務整理とは、借金が返済できなくなってしまったときに行う手続きのことです。債務整理を行うと、借金を返済するまでに猶予ができたり、減額されたりします。しかし、債務整理にはデメリットもあるので、よく理解したうえで手続きの申し込みを行わなくてはいけません。

どの会社も常に順風満帆な経営というわけではないでしょう。
新たなビジネスが失敗したり、景気が悪化してしまったりといろいろな理由で経営難になってしまう可能性があります。
経営難になった際には、お金を借り入れている先に返済することができなくなってしまうかもしれません。そのときの対応として債務整理があります。
債務整理を行うことで、借金の問題を解決できる場合もあります。
しかし、メリットだけではなく、デメリットがあることも知っておかなくてはいけません。
本記事では会社の債務整理について解説します。
実際に債務整理を行う際に、社長がとるべき行動や倒産時の選択肢についても解説しているので、会社の社長を務めている方はぜひ参考にしてください。
債務整理とは?任意整理との関係

債務整理とは、会社が所有している借金を減らしたり、支払い期限に猶予を持たせたりすることができる制度のことです、
借金が多くて首が回らなくなっている会社にとっては、債務整理は非常に役に立つ制度です。
ここでの借金は、金融機関からの借入はもちろん、キャッシングやクレジットカードの利用、住宅や車のローンなども含まれます。
これから払うことが確定しているお金は、すべて借金に該当すると考えてください。
債務整理に似ている言葉に任意整理があります。
債務整理にはいろいろな方法があり、その中のひとつに任意整理があります。
そのため、厳密には意味が異なるのですが、実際には専門家や債権者くらいしか正確な使い分けを行っておらず、ほぼ同じ意味として使われている言葉となります。
しかし、任意整理は裁判所を介さずに相手方の会社と直接話し合いをすることで、債務の整理をする方法です。
債務整理の中には、裁判所を介して債務の整理をする自己破産や会社更生なども含まれており、方法が大きく異なる点には注意をしなければいけません。
債務整理をするというだけだと、どういった方法で行うのかがわかりません。実際に債務整理を行う際には、任意整理との意味の違いをしっかりと理解しておく必要があります。
会社を債務整理するとどうなる?

債務整理は借金が膨れ上がっていて、返済することができない場合に行われます。
債務整理はいざというときの手段なので、基本的には行うことがないように経営を進めていかなくてはいけません。
債務整理によって借金の問題を解決することはできますが、ノーリスクで実施できる方法ではありません。
ここでは債務整理によるメリット・デメリットについて紹介します。
債務整理のメリット
債務整理を行うメリットは、現在抱えている借金を減らせる、ゼロにできたりする場合がある、事業を継続できるなどがあります。
これだけを聞くと、お金が返せないと思ったらすぐに債務整理を始めればよいと思うかもしれません。
しかし、債務整理にはデメリットもあるうえに、そう簡単に行える方法でないことは理解しておく必要があります。
そのため、できる限り債務整理を行わないように、借金の管理をしなくてはいけません。
しかし、一度経営状況が悪化してしまうと、そこから立て直すのが難しいケースは数多くあるでしょう。
今までと同じ経済状況だったら問題なく返済できていたのに、社会上の問題によって経営が悪化し、借金の返済ができなくなることは珍しくありません。
また、借金に追われる状況というのは精神的な負担が大きいです。
従業員や従業員の家族の生活、会社の今後のことを考えると精神的に参ってしまう方もいるでしょう。
そういった状況から少しでも楽になれるのが債務整理のメリットです。
借金の減額が債務整理の目的なので、一時的に業者からの催促がなくなるというメリットもあります。
注意しなければいけないのは、債務整理はどういった方法で行うかで得られるメリットが異なるという点です。
どの方法も借金の減額が行われるのは共通していますが、会社を残すことができるか、事業が継続できるかなどに違いがあります。
会社がどういった状況になるのが理想かを考えたうえで、債務整理に取りかかることが大切です。
債務整理のデメリット
債務整理にはデメリットも数多くあります。
まずは会社が債務整理をすると、世間的には倒産したと見られます。
債務整理とするということは、借金が返済できない状況を認めたということになるので、会社の経営状況が芳しくないと判断されるのは当然でしょう。
仮に会社が残ったとしても、イメージが傷ついた状況から復活していくのは簡単なことではありません。
社長の立場としては「破産会社の社長」というイメージがついてしまう可能性もあります。
会社が倒産した場合でも、一度破産させたイメージがついてしまっているので、その後の生活に悪影響が出る可能性があります。
そもそもですが、会社が残らない可能性があるのも大きなデメリットです。
身内だけで経営しているような小さな規模の会社であれば、倒産した際の影響も少ないかもしれません。
しかし、今まで積み上げてきたものがなくなってしまうというのはかなりのリスクです。
従業員に迷惑をかけてしまうのはもちろんですが、取引先に対しても悪影響を及ぼす可能性があります。
自分の会社の商品を頼りにして、取引先が経営を行っていた場合は、大きな負担となってしまいます。
取引先は新しい取引先を探さなくてはならず、自社だけではなく、他社にも迷惑をかけてしまいます。
会社の債務整理であっても、個人に影響がないとは限りません。
具体的には代表者も破産をしなければならないリスクがあります。
代表者も破産をする場合は、基本的に代表者の個人財産もなくなってしまううえに、個人信用情報に事故情報が登録されてブラックリスト入り状態になってしまいます。
このように、代表者個人としてもかなり大変な状況に陥ってしまうのは間違いありません。
そのため、債務整理は基本的に行わないようにするのがベストです。
債務整理を行うこと自体が悪いというわけではありませんが、お金の借入をする際に、債務整理をすればよいという気持ちで気軽に行ってしまうのは避けるべきです。
例えば、ビジネスについても、債務整理を頼りにして攻めたビジネスを行うなどです。
社長としては、会社の利益を伸ばすために攻めたビジネスを行わなくてはいけない場面もあるでしょう。
しかし、もしものときの手段として債務整理を頼りにしすぎるのは避けるべきです。
債務整理を行って、人間として健康的な生活を確保することは大切ですが、あまりにも大きなデメリットがあることを忘れてはいけません。
債務整理のデメリットをしっかりと理解しながら、行うことがないように経営を進めていくのが会社の社長として欠かせないことです。
債務整理で社長がすべきこと

債務整理を行うことが決まったら、まず弁護士へ相談するようにしましょう。
個人で進めることも可能ですが、手続きがかなり複雑で時間がかかります。
基本的には弁護士に頼まないと、手続きを行うのは不可能だと考えてください。
もし、債務整理をするかどうかが決まっていないのであれば、会社の幹部に相談をしましょう。
現在、支払いが滞っているお金があるのなら、相手方とのトラブルに発展する可能性もあります。
なかなか対応が決まらなければ、その時点で弁護士に相談をしても構いません。
債務整理をするためには、いろいろな処理を行わなくてはいけません。
その状態で借入先とのトラブルが起こってしまうと、非常に大変な状況になってしまいます。
そうならないように、早めに弁護士に相談することが大切です。
会社に顧問弁護士がいるのであれば、その方に経営状況や借入状況を伝えつつ、相談をしてください。
一時的に支払いが滞っているだけで、今後の展開次第では支払える可能性があるのなら、債務整理を行う必要はなく、借入先との交渉をするだけでよい場合もあります。
借入先に返済を待ってもらうように交渉するのは、社長自身でも問題ありませんが、弁護士という立場から交渉をした方が相手としては信頼をしやすいです。
債務整理をするかどうかの決断は社長自らする必要がありますが、そのための相談は弁護士に行うことが欠かせません。
債務整理を進めるためには、常に弁護士の協力がいると考えてください。
債務整理が可能かどうかの判断

基本的に債務整理ができないということはありません。
手元にまったくお金が残っていない状態だと弁護士に相談することができないので、債務整理が不可能となってしまうかもしれませんが、余程のことでない限り債務整理ができないということはないでしょう。
会社としてお金を借り入れていて、それを返済できないという理由なので、債務整理を行うものとしては至極真っ当です。
万が一、ギャンブルや遊びのためにお金の借り入れを行い、それが返済できないとなると認められない可能性はありますが、会社の債務整理なのでそういったケースはほとんどないでしょう。
任意整理はできない場合もある
債務整理とは異なり、任意整理についてはできない場合があります。
そもそも任意整理というのは、裁判所を介さない私的な交渉のことです。あくまでも交渉して借金を減らしたりなくしたり必要があるので、決裂する可能性もあります。
会社更生や民事更生などの債務整理と比べると、任意整理の方がデメリットは少ないです。ほとんどの方が、可能であれば任意整理で手続きを進めたいと考えているでしょう。
しかし、任意整理は簡単ではなく、できない場合も多いです。
そのため、やむなく債務整理を行うしかないというケースがほとんどです。
債務整理を行うこと自体はそれほど難しくありません。
借金のトラブルを少なくするうえで、最もハードルの低い方法といえるでしょう。
債務整理の流れ

実際に債務整理を行うことにならないのがベストですが、行うことになってしまった際は、その流れについて知っておかなくてはいけません。
ここでは債務整理の方法として、破産を選んだ場合の流れについて紹介します。
①弁護士に相談(弁護士に相談した時点で、債権者と直接交渉をする必要はありません)。
②弁護士が債権者に受任通知を出して、債権者からの連絡を引き受ける窓口となる。
③弁護士が会社の財産状況の調査を行い、財産の見落としや散逸がないように保全する。
④裁判所に対して破産手続き開始の申し出を行う。
という流れです。
裁判所が審査を行い、破産手続開始決定が出ると、破産管財人が選任されます。
破産管財人が管理処分権を有したうえで、少しでも債権者に返済を行うために会社の財産の換価を行っていきます。
債権者に配当できる財産があるという場合は、配当を行い手続きは終了です。
基本的に弁護士に任せておけばよいので、社長の立場として何かを行うことはありません。
これから先も事業を続けていったり立て直しを考えたりする場合は、弁護士が手続きを進めている間に先のことについて考えておくことをおすすめします。
債務整理以外の倒産手続き

会社更生や民事更生、破産、特別清算などは方法こそ違いますが、すべて債務整理に分類されます。
倒産手続きはほとんど債務整理によって行われますが、一部私的倒産が起こる場合もあります。
簡単に説明すると、手形交換所の加盟金融機関から当座取引や貸出取引が強制的に停止される手続きのことです。
指定期日に小切手の不渡りができないという事態を、6カ月以内に同一手形交換所管内で2回起こした場合に受ける制裁処分となります。
弁護士に任せるとは言え、あくまでも債務整理は自身が進めていく手続きとなるのですが、私的倒産となると自身が何もしなかったとしても会社が倒産してしまいます。
この方法で倒産するのはあまりおすすめできません。
借金の返済が滞りそうな可能性があるのなら、きちんと正式な方法で手続きを進めるようにしてください。
倒産時の選択肢

会社が倒産した際には、いろいろな選択肢があります。
ここでは、倒産した場合、具体的にどういった手段があるのかについて解説します。
再建型
再建型とは、会社が事業を継続しながら借金の問題を解決する方法です。
しかし、申請をした時点で倒産の1つにカウントされるのは間違いありません。倒産したのに事業が継続するということに疑問を持つ方もいるかもしれませんが、債務整理とは必ずしも会社を終わらせなくてはいけないわけではありません。
具体的にどういった方法になるのか確認していきましょう。
会社更生
会社更生とは株式会社を対象にして行われる債務整理であり、更生計画策定などに基づいて、裁判所から指名された管財人が更生計画を遂行して再建を目指すというものになっています。
しかし、会社としては事業を続けるだけの資産がないかもしれません。
そのため、基本的には選定されたスポンサーの支援を受けつつ、債務を弁済することになります。
倒産には分類されますが、債務がなくなるというわけではありません。
債務を返済するための手伝いを行ってもらう方法と考えるとわかりやすいでしょう。
会社の経営形態は大幅に変わる場合があります。
なぜなら、会社が債務を返済できない状態になったのは、会社の経営状態に原因がある可能性が高いからです。
経営破綻に大きな影響を及ぼしたと考えられる役員は、その地位から外されたり社長が交代したりする可能性もあります。
会社として大きな変化は起こりますが、債務を返済できる可能性は大きく高まります。
会社更生を行ったとしても、債務の返済ができなかった場合は、破産という流れに進むこともあるので注意してください。
会社更生を行ったら必ずしも会社が存続できるというわけではなく、最終的になくなってしまう可能性もあります。
民事再生
民事再生は中小企業に向けて行われる手続きであり、倒産した企業の経営者が引き続き経営を続けることができます。
特徴としては、債務者が主体となって再生を目指すという点があげられます。
会社更生と比べて手続きが簡単であり、計画を立てて債務を返済していくという方法になるため、借金がなくなるわけではありません。
実際に債務超過や支払い不能に陥っている方はもちろんですが、その可能性があれば申請をすることができます。
そのため、非常に間口が広い債務整理の方法となっています。
民事再生手続きを申請しても、裁判所が棄却するケースはゼロではありません。
その場合は、破産手続きに移行することになります。
会社更生と同じく、必ずしも事業が継続できるわけではないということは覚えておいてください。
清算型
清算型とは、企業や個人が財産を精算して消滅させる手続きのことです。
一般的にイメージされることが多い債務整理とは、この精算型になるでしょう。
清算型の債務整理を行えば、支払うべき借金がゼロになります。
しかし、再建型と比べてデメリットが多いのも事実です。
さきほど紹介した債務整理のデメリットの多くは、この精算型に該当します。そのため、なるべくなら精算型の債務整理を行わないように、経営を進めていかなくてはいけません。
具体的にどういった方法があるのかについて確認していきましょう。
破産
最も代表的な債務整理が破産でしょう。
裁判所が破産手続開始決定を出して、債務者の総財産をお金に変換したうえで債権者に配当していきます。
そのため、お金以外の財産であっても破産をするのであれば所有しておくことができません。
債務者から裁判所に申請があった時点で倒産したことになります。
基本的に裁判所が手続きを進めることになり、社長はその手続きに粛々と従わなくてはいけません。
特別清算
特別清算とは株式会社の解散が前提となって行われる手続きなので、解散していない会社が行うことはありません。
解散してしまった会社が、迅速に公正な清算をするために申請し、裁判所の監督のもとに手続きを行います。
手続きの申請をした後は、清算人が特別清算協定案を作成、それが可決されたらそれに従って弁済を行っていきます。
破産ほど厳格な手続きではないのが特徴です。
債務整理は可能だが行わないようにするのがベスト
債務整理にはいろいろな方法がありますが、どの方法を選択したとしても一定のデメリットがあるのには間違いありません。
そのため、債務整理はなるべく行わないようにするのがベストです。
繰り返しになりますが、経営を進めるうえで債務整理の存在を頼りにしてはいけません。
債務整理をすれば借金がなくなるというのは、見方によっては魅力的です。
しかし、大きなデメリットを控えている方法であるということを理解しなくてはいけません。
債務整理を行うということは、いろいろな人に迷惑をかけるということでもあります。
今後の自分の人生も変わってくるので、なるべく起こらないように安定したビジネスを行うことを心がけてください。